味噌は塩分が多いのに血圧に悪く出にくい?最新研究で読む塩分・発酵成分・食べ方の関係
ひろむん
🎯 この記事の結論
味噌は、塩分を含むにもかかわらず、同じ量の食塩そのものほど血圧を上げにくい可能性があります。ヒト研究では味噌を単体で評価するより、味噌を使った料理、特に味噌汁として評価されることが多いのですが、そこで見ている主役は味噌です。小規模試験では、味噌32g/日・食塩3.8g/日に相当する量を摂っても日中血圧の悪化は目立ちませんでした。[11]
ただし、これは「味噌なら塩分を気にしなくていい」という意味ではありません。味噌は“塩単独より不利に働きにくい塩分源”かもしれませんが、“減塩不要の調味料”ではありません。血圧が気になる人ほど、味噌を足すより、味噌を使う日はほかの塩分を引く、という考え方が安全です。
味噌の塩分と血圧:先に答え
「味噌は塩分が多いのに、血圧にはどうなのか?」という問いは、次の3つに分けると整理しやすくなります。
でも、味噌の塩分は「消える」わけではない
ここが誤解しやすい点
文部科学省の食品成分データベースでは、米みそ(淡色辛みそ)100gあたりの食塩相当量は12.4gです。味噌は発酵食品である前に、かなり塩分のある調味料です。[1]
結論:味噌を増やすより、ほかの塩分を減らす
実践の優先順位
味噌を使うなら、味噌量を増やしすぎないこと。さらに、同じ食事で漬物、しょうゆ、麺つゆ、加工食品、塩辛い主菜を重ねないことが重要です。
つまり、こう覚えるとシンプルです
味噌は、血圧に悪い調味料として避ける必要まではありません。 ただし、血圧が気になる人ほど「味噌なら大丈夫」と考えるのではなく、「味噌を使う日は塩分の総量を調整する」と考えるのが安全です。
味噌に何が入っている?
味噌は少量を調味料として使う食品なので、栄養価だけで健康効果を説明するのは不十分です。ポイントは、塩分、発酵で生まれるペプチド、大豆由来成分、そして味噌をどう食事に組み込むかです。
米みそ100gの代表値
淡色辛みそ
たんぱく質12.5g、食物繊維4.9g、カリウム380mg、ナトリウム4900mg、食塩相当量12.4gです。味噌は栄養もありますが、塩分の存在感が大きい食品です。[1]
イソフラボンと発酵由来成分
期待はあるが過大評価しない
大豆由来のイソフラボンや、熟成で生じる成分は、血管や酸化ストレスに関わる可能性があります。ただし、味噌単独で臨床効果が確立したとまでは言えません。
食事全体の形
Na/K比も大事
味噌は野菜、海藻、きのこ、豆腐などと一緒に使われやすい調味料です。カリウムを含む具材が増えると、ナトリウムとカリウムのバランスを改善しやすくなります。日本高血圧学会の資料でも、尿Na/K比2未満が理想とされています。[5]
ヒト研究は何を示している?
人での研究をまとめると、味噌は少なくとも血圧に強い悪影響を出しにくい、という方向では比較的一貫しています。一方で、「味噌が高血圧を明確に予防する」と断言するには、観察研究が多い、味噌以外の食生活が混ざる、介入試験が小さい、という弱点があります。
Kanda ら 1999:4年間追跡で高血圧発症を評価
正常血圧の日本人445人を4年間追跡した研究です。味噌汁を1日2杯以上摂る群で、追跡中の高血圧発症が少なかったと報告されました。[6]
読み方:興味深い結果ですが、古い研究で人数も大きくありません。味噌そのものの因果効果というより、食習慣全体の一部として読むのが妥当です。
Ito ら 2017:味噌の頻度と血圧・心拍数
50〜81歳の健診受診者527人を対象に、味噌汁摂取頻度と血圧・心拍数を見た横断研究です。味噌汁頻度と血圧・高血圧有無に明確な関連はなく、頻度が高い群ほど心拍数が低い傾向が見られました。[7]
読み方:横断研究なので因果は言えませんが、「味噌をよく摂る人ほど血圧が高い」とはなっていない点が重要です。
Nozue ら 2017:発酵大豆食品と高血圧発症
正常血圧の日本人4,165人を5年間追跡した前向きコホート研究です。発酵大豆食品の最高三分位は、最低三分位と比べて高血圧発症オッズが0.72でした。一方、総大豆食品では同じ関連は見られませんでした。[8]
読み方:発酵食品としての可能性はありますが、味噌と納豆をまとめた解析なので、味噌単独の効果とは言い切れません。
Yoo ら 2020:韓国データで発酵大豆と高血圧を評価
韓国の50歳以上を対象にした横断研究です。閉経後女性では発酵大豆食品の摂取が高血圧リスクや収縮期血圧と逆相関し、発酵大豆食品由来のナトリウム摂取は血圧や高血圧と関連しなかったと報告されています。[9]
読み方:味噌そのものではありませんが、「発酵大豆由来の塩分は、単純なナトリウム量だけでは説明しにくい」という補助線になります。
Okada ら 2018:日本の調味料使用量と血圧
国民健康・栄養調査2012〜2016年のデータを使い、しょうゆ・味噌の使用量と血圧を調べた横断研究です。全国規模データで、日本人の実際の調味料使用と血圧の関係を見ています。[10]
読み方:家庭の食事全体を反映するため、味噌だけの作用には分解できません。実生活に近いデータとして参考になります。
Kondo ら 2019:味噌32g/日の血圧試験
高値血圧〜I度高血圧の40人を対象にした無作為化二重盲検比較試験です。味噌群は32g/日、食塩3.8g/日に相当する量を8週間摂取し、日中血圧は変わらず、夜間血圧プロファイルに改善が見られました。[11]
読み方:「血圧を悪化させにくい」シグナルとして重要ですが、人数が少なく、ACE阻害活性を持つ特殊な味噌を含むため、すべての市販味噌へ一般化するには慎重さが必要です。
なぜ塩分があるのに血圧に出にくい?
ここがこの記事の核心です。味噌の塩分が血圧に出にくい可能性は、「塩分が無効化される」からではありません。発酵由来成分、腎臓でのナトリウム排泄、交感神経、食事全体のミネラルバランスなど、複数の小さな仕組みが重なっていると考えるのが現時点では自然です。
1. ACE阻害ペプチドが血圧反応を和らげる可能性
ACEは血圧を上げるホルモン系に関わる酵素です。味噌や大豆発酵食品にはACEを抑える小さなペプチドが報告されており、発酵や熟成が血圧反応に影響する可能性があります。[15]
4. 味噌を使う食事は、具材でバランスを取りやすい
味噌は野菜、海藻、きのこ、豆腐などと一緒に使われやすく、食事全体ではカリウムを増やしやすい調味料です。Na/K比の改善は血圧管理で重要な考え方です。[5]
⚠️ ただし、濃く使えばメリットは相殺されます
味噌の血圧への不利が見えにくい可能性はありますが、味噌を濃く使う、具材が少ない、しょうゆや漬物を重ねる、麺類の汁まで飲む、といった食べ方では総塩分が増えます。味噌の機能性は、塩分管理を上書きするほど強い証拠ではありません。
血圧以外の健康効果はどこまで言える?
味噌には発酵食品としての魅力がありますが、血圧以外の健康効果は慎重に見る必要があります。味噌単独の直接証拠と、納豆を含む発酵大豆食品全体の証拠を分けて読むことが大切です。
代謝・腸内環境
根拠の強さ:低い
インスリン抵抗性、HbA1c変動、逆流症状などに良い関連が報告されていますが、中心は横断研究です。発酵食品全体では腸内細菌多様性や炎症マーカーに良い結果がありますが、それを味噌単独の効果とは言えません。[20]
⚠️ 高摂取は塩分面から注意
JACC Study では、味噌を味噌汁として1日3杯または4杯以上摂る群で胃がんリスク上昇が報告されています。[21] ただし、他の統合解析では味噌汁と胃がんリスクに有意関連なしとする結果もあり、結論は「味噌が危険」ではなく「高塩分摂取を避ける」が妥当です。
実用的にはどう使う?
健康効果を最大化する味噌の推奨摂取量は、まだ確立していません。だからこそ、目的は「味噌を増やす」ではなく、「味噌を使いながら総塩分を整える」ことです。
妊娠中・授乳中
通常の食事とサプリを分ける
普通の食事中の味噌を過度に怖がる必要はありません。ただし、食品安全委員会は妊婦・胎児・乳幼児・小児について、大豆イソフラボンを日常の食生活に上乗せして摂取することは推奨できないとしています。[22]
味噌の使い方
具材・だし・減塩味噌
野菜、きのこ、海藻、豆腐などの具材や、だしのうま味を活かすと、満足感を保ちながら味噌量を抑えやすくなります。減塩味噌を使うのも現実的です。
まとめ
味噌は、塩分を含む食品でありながら、血圧を単純に悪化させるとは言い切れない興味深い発酵調味料です。ヒト研究では「味噌をよく摂る人ほど血圧が高い」とはなっておらず、小規模介入試験では日中血圧の悪化が目立たない結果もあります。
一方で、味噌単独で病気を防ぐ、血圧を下げる、免疫を高めると断定するには証拠が足りません。健康効果を狙って量を増やすより、総塩分を管理しながら、発酵調味料として無理なく使う。それが、今のエビデンスに最も合った味噌との付き合い方です。
参考文献
- 文部科学省 食品成分データベース. 調味料及び香辛料類/米みそ/淡色辛みそ.
- 厚生労働省 e-ヘルスネット. ナトリウム.
- World Health Organization. Sodium reduction.
- 日本高血圧学会. 減塩・栄養委員会.
- 日本高血圧学会. あなたの尿Na/K比(ナトカリ比)は.
- Kanda A, et al. Association of Lifestyle Parameters with the Prevention of Hypertension in Elderly Japanese Men and Women. Asia Pac J Public Health. 1999.
- Ito K, et al. The Effects of the Habitual Consumption of Miso Soup on the Blood Pressure and Heart Rate of Japanese Adults. Intern Med. 2017.
- Nozue M, et al. Fermented Soy Product Intake Is Inversely Associated with the Development of High Blood Pressure. J Nutr. 2017.
- Yoo D, Park Y. Association between the Intake of Fermented Soy Products and Hypertension Risk in Postmenopausal Women and Men Aged 50 Years or Older. Nutrients. 2020.
- Okada E, et al. Association between the Portion Sizes of Traditional Japanese Seasonings—Soy Sauce and Miso—and Blood Pressure. Nutrients. 2018.
- Kondo H, et al. Long-term intake of miso soup decreases nighttime blood pressure in subjects with high-normal blood pressure or stage I hypertension. Hypertens Res. 2019.
- Ito K. Review of the health benefits of habitual consumption of miso soup: focus on the effects on sympathetic nerve activity, blood pressure, and heart rate. Environ Health Prev Med. 2020.
- Du DD, et al. Blood pressure reduction by Japanese traditional Miso is associated with increased diuresis and natriuresis through dopamine system in Dahl salt-sensitive rats. Clin Exp Hypertens. 2014.
- Tomari K, Uehara Y. Mechanisms for the Attenuation of Salt-induced Hypertension by means of Long-term Miso Intake. Bull Soc Sea Water Sci Jpn. 2020.
- J-STAGE. ACE inhibitory substances derived from soy foods.
- Katagiri R, et al. Association of soy and fermented soy product intake with total and cause specific mortality. BMJ. 2020.
- European Journal of Clinical Nutrition. Fermented soy products intake and risk of cardiovascular disease and total cancer incidence. 2020.
- Yamamoto S, et al. Soy, isoflavones, and breast cancer risk in Japan. J Natl Cancer Inst. 2003.
- Cancer Medicine. Fermented and nonfermented soy foods and the risk of breast cancer in a Japanese population-based cohort study. 2021.
- Wastyk HC, et al. Gut-microbiota-targeted diets modulate human immune status. Cell. 2021.
- Umesawa M, et al. Salty Food Preference and Intake and Risk of Gastric Cancer: The JACC Study. J Epidemiol. 2016.
- 食品安全委員会. 大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A.